ORCAの現実と未来
2002-02-17
第3回鳥取県医療情報研究会発表
鳥取県鳥取市:安陪内科医院
安陪隆明
ORCAの目的
- ネットワークインフラとしてのベース(医療の情報ネットワーク化の最初の切り口、布石):
- レセコン業界への一石: 日本医師会常任理事、西島英利先生: 「これからのレセコンは互換性が競争を生む」
- ローコスト化
ORCAの要件
- すべてのパーツがオープンソースである。Windowsすら使わず、オープンソースのLinuxを使う。(ただしATOKをオプションとして選べる方向。マスター類のみ改変不可)
- 常時接続ネットワークを前提としている。
- インターネットを通じて、病名マスター、保険病名適応データベース、併用禁忌薬剤データベースなどの更新を計画
何故、オープンソースか?
- 商用のソフトをベースにしていると、その会社の方針や契約に振り回される。個人が短期に使うソフトなら商用でも良いが、大組織が長期に使うソフトはそれでは駄目。
- 日本医師会常任理事、西島英利先生:「Windowsを使うとマイクロソフト社に首根っ子を掴まれる」
- ローコスト化
- 有志による開発も見込める。
ORCAのスケジュール
- 平成13年1月23日: ORCAプロジェクト発表
- 平成13年3月: 島根県等3地域で準試験運用開始
- 平成13年6月から全都道府県で本試験運用の予定であったが、ずるずると遅れて、当院に来たのは平成13年11月8日のことであった。
- 平成14年4月: 地域、業者が限定された形での本運用の開始予定。
ORCAの本試験の実態(当院)
- マニュアルは紙ではなくてPDFファイルであり、それが416ページもあるので、印刷もままならない状態であった。
- 患者さんを一人でも登録しようと一週間ほど格闘したが、あまりにわからないところが多すぎて、それ以上操作するのは断念。
- 島根の小竹原先生に相談したところ、「新しいバージョンに変えましょう」
- 2週間前に新バージョンが届く。
現時点のORCA
- 平成14年4月に一応使えるようになるが、一応使えることと、満足に使えることは別物。
- そもそも20〜30年の現場での実績とノウハウを積み重ねてきた既存のレセコンに匹敵するものが、たかだか1年の開発期間でできるわけがない。4,5年は見守ってあげるべきではないか?
- ノウハウ、スキルの地域格差が大きい。
ORCAの今後の課題
- 地域格差の解消
- 既存のレセコン並の付加価値の充実
- ネットワークを活かしたサービスの充実
- ネットワークをベースにしての紹介状のやり取りなど、レセコン機能に留まらない医療情報上の発展
- 「ORCAは単に『安いレセコン』なのではなくて、日本の医療ネットワーク化の基礎になるものだ」という医師会員の認識の必要性
その他
平成14年2月3日、日本医師会館で行われた「全国医療情報システム連絡協議会第18回定例会議報告」でのORCAシンポジウムにて。
日本医師会総合政策研究機構研究部長: 石原謙先生より「これからの(情報ネットワーク社会の中の)医療では、Accountability(説明責任)とTranparency(透明性)が必要」←ORCAの基本となる理念
座長より「ORCAは高齢出産で、予定日より遅れて、未熟児かもしれないが、それを育てるのは自分達で、自分達が成長することでORCAは成長するのではないか。」
リンク
2001年7月記載:「ORCAの見据える未来」
全国医療情報システム連絡協議会第18回定例会議報告