レセプト電算処理導入 〜東芝Tosmec GXの場合〜

石津クリニック

石津吉彦


導入の理由

 以前より,レセコンに入力したデータは我々ユーザーのものであり,これを自由に取り出して二次活用できるようにするのはメーカーの義務だと考えていた.しかし,メーカーはデータを人質に取り,機種更新の際に他社へ乗り換えられる事を防止する事ばかりに腐心して来た.また,病名のチェックや薬歴チェック等,ユーザーがカスタマイズする事は事実上不可能である.折角,専用のコンピュータがあるにも拘らず,印刷したレセプトを,順番を揃えて紐で纏めるという作業に時間が掛かる.これらを解決するために,現状では一番可能性が高いと判断した事,出力されたデータをみて,内容的に問題ない事が確認できたためである.

東芝Tosmec GXの特徴

 長所としては,
1)病名マスタ,点数マスタを厚生省コードと共にCSV出力可能,
2)患者基本情報(氏名,生年月日,住所,保険情報等)がCSV出力可能,
3)処方内容がCSV出力可能,
4) 処置や行為情報をCSV出力可能.
という点である.
 欠点は,処置や行為情報をCSV出力できない.病名チェック機能のカスタマイズが不十分(左右の処置と左右の病名のチェックが出来ない等)事である.

実際の導入にあたって

 Tosmec GXのシステムを4.9Xから5.11へ更新することで,レセコンを買い替える事なく,レセプト電算処理プログラムがインストールできた.厚生省マスタと院内マスタとのチェックが必要になる.これは,メーカーの担当者が,医学知識や保険請求の全てを熟知しているとは限らない事による.当院では,副鼻腔炎と鼻副鼻腔炎を使い分けているが,メーカーのサービスマンは同一病名と判断して,コーディングしていた事が後日判明した.処置・行為のセット項目は,レセコン独自のものであり,レセプト電算処理の際には入力上問題が生じるので,実際のチェックが必要である.当院では,アレルギー検査のセットで,アレルゲンの種類数でセットを組んでいたが,これをアレルゲンの量で入力する事で解決した.

導入した事のメリット

 紙レセプトへの印刷に比べ,CSV出力の方が1/2〜2/3程度の時間短縮が可能である.また,出力時にプリンタの紙詰まりや用紙補充などを気にせずに済むようになった.紙レセプトの様に,”もっとい”で纏める必要が無くなり,保険者毎,番号順に整理する必要もなくなり,事務職員の時間外が実質”ゼロ”となった.レセプト専用用紙が不要となり,月に数千円の用紙代が節約できる事になった.導入費用の35万円は2年以内に回収可能と考えている.

活用例

 出力されたデータは,基本的に厚生省が決めた仕様書に従っているため,この仕様書から必要なデータ(今回は患者保険情報,病名情報,行為情報など)を抽出して,簡単にファイルメーカーに取り込める様にできないか,プログラマの知人に相談したところ,CSVデータをそれぞれの情報に分割し,私が作成したファイルメーカーProのテン プレートに1度で取り込めるawkのスクリプトを提供して頂いた.実際の使用については,この度Vectorのフリーウェア登録を行ったので,ビジネス/医療のPenguin Script(注参照)を御覧頂きたい.この処理後,ファイルメーカーProに取り込み,病名チェックを行う事で私のレセプト点検は,月末に1時間ほどMacの前に座る事で済むようになった.これが最大のメリットかと考えている.
 最後に,このレセプト電算処理プログラム導入により,レセプトデータをメーカーから取り戻す事が出来た点は,実は非常に大きな意味がある.更新の際には,有利な立場に立てる事になったのである.



Windows用 Penguin Script ファイル
http://www.vector.co.jp/soft/win95/business/se179347.html

Mac用 Penguin Script ファイル
http://www.vector.co.jp/soft/mac/business/se179447.html


2002年1月29日訂正

元の文章では「処置や行為情報をCSV出力できない」と書かれていましたが、石津先生より「実はできる事があの後判明しました.現在はほぼ全てのデータをCSVで取り出しております」というメールを2002年1月28日にいただきましたので、訂正させていただきました。



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