安陪内科医院
安陪隆明
全国レベルの大きな医療情報研究会としては、全国医療情報連合大会、全国医療情報システム連絡協議会、地域医療情報ネットワークシステム研究会(COMINES)の3つの研究会があげられる。この中で全国医療情報連合大会が平日開催で企業や大学、一般病院などからの出席者が多い研究会であるのに対して、全国医療情報システム連絡協議会、地域医療情報ネットワークシステム研究会(COMINES)は、土日開催で開業医、医師会関係者の参加が多く、内容としても開業医、医師会関係者を対象とした医療情報研究内容が中心となっている。
毎年、全国医療情報システム連絡協議会、地域医療情報ネットワークシステム研究会(COMINES)に参加しているが、平成12年は、10月14日,15日に藤沢市で第14回地域医療情報ネットワークシステム研究会(以下、COMINESと略)が、そして11月25日,26日に浦和市で第17回全国医療情報システム連絡協議会(以下、全医協と略)が開催された。その中のトピックスを紹介したい。
COMINESでは西島英利日本医師会常任理事が「医師会総合情報ネットワーク」という演題で発表された。それによると、平成12年7月の時点で、都道府県医師会ではインターネットアクセス状況、ホームページ開設状況どちらも100%であるのに対し、郡市区医師会のインターネットアクセス状況は約71%であり、またホームページ開設状況は約40%であった。次の目標としては全郡市区医師会のインターネットアクセスであり、そこから都道府県、郡市区医師会のネットワーク完成を目指していく。日医ホームページのアカウント取得者が10%に満たないため、全会員へのアカウント発行を検討中とのことであった。
COMINESでは谷口隆厚生省健康政策局健康開発振興課医療技術推進室長が「医療分野におけるIT - 厚生省の考え方 -」という演題で発表された。それによると、
という方向性が示された。
全医協で注目した一般演題を上げると、まず森近茂 福山市医師会医療情報化推進担当理事より「福山市医師会理事会資料のペーパーレス化について」という発表があった。これは理事会に使う資料をすべてデジタル化してペーパーレス化したものである。全理事(20人)にノートパソコンを配布し、グループウェア(サイボウズ)と全文検索システム(NAMAZU)で資料をペーパーレスとした。理事は理事会の4日前までにメールで資料を提出し、それらはHTML化されて、理事はそれを後で確認。外部から届く文書などはスキャナーで取り込まれPDF化された。これにより1回の会議にかかる時間が3時間から2時間へ短縮された。また会議後の議事録の作成が1回の会議あたり16時間から6時間へ短縮された。コピー枚数が減少し、個人ファイリングも不要になり、資料の高速検索も可能になった。導入から半年後、20人の理事のうち3人がまだ苦労されているとのことながらも、すべての理事がこのシステムが有用と評価しているとのことであった。
また三原一郎 山形県医師会医療情報システム委員会委員長より「鶴岡地区医師会情報化の現況 -特に医療機関機能の公開について-」という発表があった。鶴岡地区医師会では今までも、
1997年 9月 | 在宅患者情報共有サービス | 現在、10名の医師と300名の患者が参加 |
1998年11月 | 医療相談システム | 現在までに100通の質問 |
1999年 5月 | 検査情報システム導入 | 現在、30医療機関が参加 |
1999年11月 | 毎日メール運動 | 現在、50名が参加 |
2000年 5月 | 医師会報のPDF化 | 現在、63名が利用 |
という素晴らしい業績を上げているが、今回の発表では「医療機関機能の公開」について述べられた。各専門科情報について、どういう情報を載せるかを各科ごとに委員会を作って開示項目を決めた上で、全医療機関から情報を集め、それをデータベースに入れた上で、そこから全54ページの冊子を制作し、それを医療機関に配布したという。それとともに医療機関がホームページからもこの情報を見られるようにしたとのことであった。またさらにJavaベースのスタンドアロンアプリケーションも用意してそれを希望者に配布した。医療機関名、標榜科、電話番号などの「基本情報」については、家庭向けの冊子として全戸に配布し、また一般のホームページだけでなくiモードにも対応させて、一般市民がホームページから検索可能としたとのことであった。
COMINESでは「電子カルテ、今までとこれから」という演題で遠藤郁夫 小田原医師会理事より発表があり、その中で、
従来の紙カルテの電子化 | → | 完成 |
レセコンとの一体化 | → | もう一歩 |
カルテ情報の共有化 | → | これから |
という図式が示された。
また全医協では「新宿区医師会における包括的地域ケアシステム」という演題で秋山正範 国立国際医療センター内科情報システム部長より電子カルテネットワークの「ゆーねっと」についての発表があった。これは新宿区医師会館にサーバを置き、ネットワークで国立国際医療センターや各診療所にWebベースの電子カルテシステムを提供するものである。電子カルテデータはすべて新宿区医師会館のサーバの中に蓄積され、患者の同意書が得られれば、カルテの情報は複数の参加医療機関で共有される。「一地域、一患者、一カルテ」を目指した電子カルテネットワークシステムである。
ここで各電子カルテの特徴をまとめると以下のようになる。
価格が安い | ダイナミクス WINE |
既存のレセコンと連動できる | メディコム 東芝 日立 富士通 FALCO |
レセプト処理機能がある | ダイナミクス BML |
電子カルテ←→レセコンの情報交換規約である CLAIMに対応している |
WINE |
レセプトのFD提出(レセ電算)に対応している | メディコム 東芝 日立 富士通 |
検査結果が自動的にオンラインで送られて来る | BML FALCO |
ペーパーレスでも真正性の確保が確実 | BML ゆーねっと |
医療情報の共有化を見据えている | ゆーねっと WINE |
医療情報交換規約(MML)に対応している | WINE |
全医協やCOMINESから外れるが、2001年1月18日の日本経済新聞には、日本医師会がレセコンソフトを配布し情報ネットワークを構築する計画が掲載された。これについては日本医師会からの正式な発表が待たれる。
(※この研究会は2001年1月21日に行われましたが、この2日後の1月23日に、この件について日本医師会から正式発表が行われました。詳しくは、日本医師会の会員向けホームページ
http://www.jmari.med.or.jp/contents/report.cfm?cntid=57&repid=443&preview=OFF
http://www.med.or.jp/japanese/members/orca/index.html
をご参照ください)