2歳になったORCA - 現状と課題 -

2004年4月

安陪隆明

2004年4月にORCAはリリースされてから満2年を迎えることとなった。この2年間のORCAの歩みと現状を考察するとともに、今後のORCAプロジェクトの課題について述べてみたい。 (尚、厳密には「ORCA」はプロジェクト名であり、レセコンソフトの名前としては「日医標準レセプトソフト」であるが、ここでは文章のわかりやすさを優先して、特に区別せずに「ORCA」という言葉を使っている)

筆者が2001年7月に書いた「ORCAの見据える未来」では、『「来年4月から無料でレセコンソフトが使えるようになる」と期待している人にはがっかりするような、未成熟なレセコンソフトのままである可能性が強い』という予測を行った。また、この頃より「ORCAのような大規模なソフトウェアのバグが概ね取れて、安定して使えるようになるのには3年が必要だ」という話を筆者はしていた。実際問題としては、細かなバグの頻発はあったものの、壊滅的な損害をもたらすようなバグは、この2年間にほぼ認められなかったと言って良いのではないかと考えられる。その意味では、比較的予想していたよりもORCAの稼動状況は安定していたと言えるのではないかと考えられる。

また普及台数については、筆者は「1年後に50台くらい。2年後に300台くらい」と予想していたが、ORCAの稼働状況を示すWebサイトより単純に台数を見ると、2004年3月24日における調査では、ORCAのみで運用している医療機関が518施設。導入作業中が303施設となっている。

2004年03月25日現在:日医標準レセプトソフト実運用518施設、導入中303施設、検討中424施設

上の図はhttp://www.orca.med.or.jp/orca/nintei/kadou.rhtmlに表示されていたhttp://www.orca.med.or.jp/orca/nintei/nintei_png/2004-03-25-deployment.pngからの引用です。

この数字は2年目としてはかなり優秀な台数であると筆者は考えている。ただしこの地図に書かれている各都道府県別の数値を見ていると、現在のORCAが抱えている問題点がいろいろと浮かび上がってくるように思われる。

東海道、および一部地域にのみ集中するまだら状普及状態

ORCAの稼働状況を示すWebサイトの地図を見てまずわかるのは、普及台数にかなりの地域差が存在するということである。まずわかりやすいのは、東京を中心とした関東圏から静岡、愛知まで、そして少し飛んで大阪といった、いわゆる東海道沿いの一帯に集中していることである。これは日本の産業、人口が集中している、日本の背骨というべき地域であり、ORCAもその例外ではない、という点では一見解釈しやすい状況ということが言える。しかし本当にそのように単純に解釈してよいのか、またこのように「都会と地方」でかくも差がついている、ということ自体に実は大きな問題点を孕んでいるのだが、そのことについては後述したい。

次にわかるのは、これ以外の地域では極めて低調でありながら、まるで飛び地のようにORCAが普及している県が存在している、という点である。これは「○○産業圏」的な考え方ではまったく説明できない、地理的にまだら状となったORCA普及である。実はこの地図でわかるのは都道府県別までであるが、もしこの地図を「郡市区別」とした場合、さらにこのまだら状の散布が著明になると著者が想像するだけの情報が存在する。このような東海道および一部地域にのみ集中するまだら状普及状態は、どのようににして生じたのであろうか? またそれはどのような問題を投げかけているのだろうか?

医師会員の中でのORCAに対する評価の分かれ方について

この問題に答えをだす前に、ORCAについて医師会員の中での評価の分かれ方について考え、それを通してORCAプロジェクトの特徴を再認識したい。

ORCAプロジェクトが開始される際に議論を呼んだのは、
「なぜWindowsではなくLinuxなのか?」
「なぜ医師自身が簡単にインストールして運用できるようになっていないのか?」>
という点であった。すでにこの問題については、筆者が2001年7月に書いた「ORCAの見据える未来」でも言及したが、ここではもう一段掘り下げてこの問題を考えたい。

日医が扱っている大半のプロジェクトでそうであるが、(というよりも大規模な組織のプロジェクトは皆そうであると言っても過言ではないが) 組織が大きくなればなるほど、その組織に会費等の費用を供出している会員などの構成員全員100%が納得するプロジェクト、全員100%が直接的に利益を受けるプロジェクトというのは存在が困難となる。例えば、
「自分は○○党支持者であるが、自分が会費を払っているこの組織が△△党の□□議員を応援するなどおかしい!」
「自分は○○教を信じているのに、町内会費の一部が祭りの費用として神社に納められるのは納得いかない」
といったような、一部の構成員による組織に対するクレームは一般に避けられないものである。

ORCAの場合も残念ながらその例外ではない。ORCAは大半の医師会員の利益に直接応えられる存在であり、また会員全体の間接的な利益も大きなものがあるが、その一方でこれもまた、医師会員全員100%が納得したり直接利益を得たりできるプロジェクトでもないのである。ORCAもまた隙間(niche)の存在を避けることができない存在であり、それ故にそのプロジェクト始動時から現在に至るまで一部の医師会員から批判を浴び続けてきた。

この批判の有無は、基本的に医師会員それぞれのコンピュータに対する「スキル」と、レセコンの価格体系をどう下げるべきかという戦略に対する「思想」の違いによるもので、ある程度大雑把に類型化することが可能である。

まずスキル軸を、次の3分類で大きく分けることができる。

スキル1-コンピュータには必要以上には触りたくない
スキル2-Windowsは得意でどんどん積極的に使うが、Linuxなどになるとわからない
スキル3-Windowsはもちろん、Linuxも問題なく使うことができる

これらのスキルのパーセンテージを正確に把握できているわけではないが、常識的に考えて、スキル1が医師会員の大半を占めるであろう大多数であり、その残りとしてスキル2が少数に存在し、スキル3が極めて稀ということは十分推測できることである。

またレセコンの価格体系をどう下げるべきかという戦略に対する思想軸を、次の3分類で大きく分けることができる。

思想A-レセコンの価格を下げようとする方策の思想を特に持たない
思想B-レセコン業界そのものを変革して低価格化させたい
思想C-レセコンを医療機関や自分が運用しメンテナンスすることで低価格化させたい

このような分類を行ったのは、思想BがORCAプロジェクトのオープンソースビジネスモデルの考え方と結びつくからである。日医ニュース 第967号 (平成13年12月20日) ORCAプロジェクト通信 (第1回)にも次のように書かれている。

会員の先生方がORCAのレセコンを導入するには,2つの方法がある.

(1) 地元でORCAのレセコンを扱う業者から購入,メンテナンスの契約をする.

(2) 自院でORCAのレセコンを組み立て,自院でメンテナンスをする.

(1)は,医療機関から見て,今までのベンダーを通じたレセコンを購入する仕組みと同じである.ORCAではプログラムが無料になるが,ハード(PC)やサービスに対する対価はやはり必要となる.医療の情報化の自由な発展を妨げることのないよう,導入やメンテナンスの費用に関して,日医による統一はしない予定である.従来との大きな違いには,プログラムやデータベースの規格がオープンであるため,特定の業者やメーカー製品を使い続ける必要がないこと,他のシステムとも接続がしやすい点などが挙げられる.

(2)の導入方法には,高度なコンピューターの知識が必要である.また,レセプトコンピューターは,医療機関の重要な業務システムでもあることから,一般の先生方には,(1)の方法をおすすめしている.

つまり「一般の先生方には」「(1) 地元でORCAのレセコンを扱う業者から購入,メンテナンスの契約をする」ことが勧められており、「(2) 自院でORCAのレセコンを組み立て,自院でメンテナンスをする」は、禁止されていないまでも、勧められてはいないのである。ある意味ORCAプロジェクトは、オープンソースビジネスモデルを採用することによってレセコン業界構造そのものを変革することも視野に入れているプロジェクトであるとも言える。このことは同時に、ORCAプロジェクトにおいては、ORCAを扱うベンダーを必須の存在にしているものとも言うことができる。

この2つのスキル軸と思想軸を交差させると、3x3の9分類で医師会員を分類することができるようになる。ただし、「スキル1 - 思想C」すなわち、「パソコンに触りたくないにも関わらず、レセコンを自分が運用しメンテナンスしたい」といった矛盾した人間は極めて珍しいと考えられるため、実際にはこれを引いて8分類になるということが言える。これらの分類のどれかによって、ORCAによって直接受ける利益や納得はかなり異なることになる。これを以下に図示する。

スキルと思想の交差表

まず思想B一帯でみると、この思想Bを持つ会員はORCAプロジェクトに対して、自分のスキルにまったく関係なく賛同できる人たちである。また思想Aの場合は、「よくわからないが、とにかく安くて問題なく動けばそれでいいではないか」という考えを一般に持つものであり、これまたスキルに関係なくORCAによって安くて良質なレセコンが使えるようになればそれでいいという感覚の人たちということが言える。

次に「スキル3 - 思想C」という会員、すなわち俗に言う「ORCA自力ユーザー」は、ORCAに概ね満足する一方で一部不満を抱いているとも言える。俗に言う「ORCA自力ユーザー」に対して、日医総研側からの直接サポートが少なく、時にはかなり苦労することもあるからである。

最後に「スキル2 - 思想C」という会員が、ORCAから直接のメリットを受けることができず、ORCAに納得できず、ORCAを批判する中心となっている人たちとなる。この「スキル2 - 思想C」こそ、ORCAプロジェクトがカバーできていない隙間(niche)であり、またORCA時代にニッチ市場を形成する可能性を持った領域でもある。「スキル2 - 思想C」の典型的な主張は「Windowsで動くレセコンソフトを作り、それを医師自身が運用できるようになれば、ベンダーなど必要なく、ベンダーにお金を払う必要もないので安上がりにできる」というものとなる。もちろんこの考え方にもいくつか問題があり、

  1. この構想で直接の利益を受けられる会員は、ORCAプロジェクトよりも多いのか?
  2. 診察中にレセコンが壊れた場合、忙しい医師自身が復旧作業をするのか?
  3. Windowsはあくまで一営利企業の商品にすぎず、肝心要の部分を一営利企業に握られる恐れがある

といった反論があるが、これらの問題は各メーリングリスト、各電子会議室で多数同様の議論が繰り返されたこともあり、ここではこれ以上触れない。ただ一つ言えることは、単一の方策のみで、医師会員全員100%が納得したり直接利益を得たりできるプロジェクトは存在しないということである。

(尚、以上の分類はあくまで「大雑把」であって、この分類にあてはまらない人たちなど多数存在するであろう。あくまで全体を見渡しての抽象的な枠組みである)

ベンダーの育成なくしてORCAなし

話が横道にそれてしまったが、再び話を「東海道、および一部地域にのみ集中するまだら状普及状態」の問題に戻したい。

オープンソースのレセコンを、ベンダーを通して一般会員へ提供しようとするORCAプロジェクトでは、ベンダーという存在がなければORCAを一般の医師会員へ提供することができない。どんなに一般会員がORCAを購入しようと思っても、それを販売してくれるベンダーが存在しなければ購入のしようがないのである。ベンダーの存在を必要としないのは、「スキル3 - 思想C」という極めて一部の医師会員のみであり、一般の医師会員にとってベンダーは必須の存在である。ところがここで大きく指摘される問題は、

という点である。ここにいくつもの問題点が存在している。

まず、ORCAというプロジェクト自体が一般の技術者にはほとんど知られていない上、また医療事務教育の分野でもほとんど知られていない。技術者や医療事務を学んだ人たちへの、ORCAという存在があることの宣伝はまだまだ足らないと考えられる。

さらにORCAという存在を知り、自分がベンダーになることに興味を持ったとしても、ORCAのベンダーになろうとする技術者は、いくつもの問題に直面することになる。

まずレセコンは医療機関が一般には5-10年に1回買い換えるかどうか、という商品であるということがあげられる。リースも残っているのにORCAに買い換えようという医師会員は極めて稀な存在であり、「ORCAには興味があるが、あと5年くらいはレセコンを買い換えるつもりはない」といった医師会員は少なくない。しかし、そのベンダーの商圏において、最初の年に数件しか売れないようでは、単独事業としては1年もたない。

またさらにもう一つの問題は「日医IT認定制度」にもある。日医総研は2002年5月、「日医IT認定制度」というものを作り、これにより、

  1. ORCA認定システム主任者
  2. ORCA認定インストラクタ
  3. ORCA認定サポート事業所

というものを定めた。1と2は、そのための試験に合格したものに与えられる資格のようなものであり、また1と2を揃えた3.ORCA認定サポート事業所をORCAのWebサイトで紹介する、といったものである。基本的にはORCA事業を行うベンダーをサポートするものであり、また会員の「どのベンダーを信頼して受注してよいかわからない」という声にも応えることを意図としていた。ORCAを扱うことができる基本的なスキルを持っていることの証明と言えるものであり、必ずしもこれを取得しなければベンダーになれないわけではないが、実質的にはこれがないとまずORCAベンダーとしては営業が困難ということが言える。

この制度はORCAのベンダー事業を普及させるためのものであるが、このような制度があっても、ベンダーになる道は険しく、しかもこの制度自身がベンダー育成の妨げになっている一面も否定はできない。一例として、Linuxの技術を持っている技術者が、ORCAベンダーとなろうとした場合、どのような障害にぶつかるかを列挙してみよう。

  1. ORCAのインストール方法、障害回避方法などを勉強したいが、それらの情報がどこにあるのかよくわからない。(教育体制の未整備)
  2. Linux等コンピュータの技術はあっても、医療事務についてはよくわからないので、ORCA認定インストラクタまで技術者が取得するのは困難である。
  3. 地元のORCA認定インストラクタの人と出会いたいが、どこにいるのかわからない。(人脈の欠如)
  4. 東京のような都会のスケールメリットのあるところでなければ単独事業としての採算は見込めない。(市場スケールメリットの有無)
  5. ORCA認定システム主任者試験の受験料が高い(84,000円)
  6. 事業所認定手数料が高い(126,000円)
  7. 地方の人間は、受験のための東京までの旅費および宿泊費も馬鹿にならない。

またORCA認定インストラクタになれるような人が抱える問題点をあげてみると、

  1. ORCA認定インストラクタを取っても、それを活かせるベンダーがその地域に存在しない、もしくはどこにあるのかわからない。
  2. ビジネス学校などの医療事務の講座では、手書き計算でしか医療事務を習っていなかったり、ORCA以外のレセコンを使って少しだけ習った程度であり、ORCAの使い方を勉強する方法がよくわからない。(医療事務教育現場におけるORCAの不在)
  3. ORCA認定インストラクタ試験の受験料が高い(84,000円)
  4. 地方の人間は、受験のための東京までの旅費および宿泊費も馬鹿にならない。

などがあげられる。逆に言えば、上記にあげた問題点を比較的クリアできる地域が、 「東京を中心とした関東圏から静岡、愛知まで、そして少し飛んで大阪といった、いわゆる東海道沿いの一帯」 といったことになるのである。これがこの一帯でORCAが普及した理由となっている。さらに裏を返せば、これ以外の地域ではORCAは数年のスパンでは到底自然には普及し得ない状況にあるということであり、これが現在のORCAを普及させるための最大の問題点であると言うことができる。

それでは、飛び地のようにORCAが普及している県(というよりも実際は郡市)ではいったい何が起こっているのであろうか? 「自然には普及し得ない状況にある」からこそ、そこでは「地域医師会」の人為的なORCA普及のための努力がなされているのである。このことは、ジャミック・ジャーナル誌が連載した「三者で支えるORCAの進化」の中で、ORCAが普及している地域では、各地域医師会がベンダーの後方支援に回っていることが見事に示されている。このように、地域医師会がORCA後方支援を行った場合の力は強力なものがある。

では、この問題は地域医師会が努力して解決すべきものなのであろうか? この答えはYesともNoとも言える微妙な位置にあるのではないかと筆者は考える。

まず問題点の一つは、オープンソースビジネスモデルに基づくORCAプロジェクトにおいては、「真の自由競争原理市場の獲得」が基本原則であり、この考えが補助や何らかの支援といった考え方と、基本原則上は対立するということである。これについては筆者は、「自由競争主義」を原理原則としつつも、ORCA市場そのものがなかなか立ち上がらない今の状況に対しては、「後方支援策」が必要だ、という折衷的な考え方を持っており、このことを平成14年11月の「福山ORCAフォーラム」でも発表を行った。

例えば、明治時代の初期、日本は欧米の産業革命後の状況に追いつくため、第二次産業の育成が急務であった。しかし日本には第二次産業の土台そのものがまったくなく、そもそも資金を融資するための銀行すら存在しなかった。そのため明治になってからは銀行から国営で作り、そこからの融資で第二次産業が発展するように力を入れ、それでも足らざる部分では国営の工場まで作った。ここまでは国家主導であり、この状況をそのままにしておけば、日本は自由競争経済ではない社会主義国家になったかもしれないが、しかし日本は国営の工場や銀行を民間に払い下げ、資本自由主義の方向性を堅持した。このような一時的な後方支援策が、ORCAという、現在市場自身がうまく立ち上がっていない分野においても必要ではないかと考えられるのである。

もう一つの問題点は、ORCAに対する各地域医師会の考え方の温度差である。一般に地域医師会の医療情報システム委員は、スキル2もしくはスキル3であることが多い。そしてこのスキル2もしくはスキル3においては、思想Bに立つか、思想Cに立つかで、ORCAへのその地域医師会の態度はがらりと変わることになる。逆に言えば、これが飛び地のようなまだら状の地理的分布を示す根本的な原因となっている。

筆者は2002年2月に、「日本医師会の情報化政策への提言」において、

  1. 全国レベルの医学、医療系メーリングリストを日本医師会として運営、支援を行い、将来的に認証局が出来たときには、セキュリティと認証能力を持ったメーリングリストサービスへの移行を図ること。
  2. 日本医師会が正式に郡市区医師会の情報システム委員を集めた会合、いわば仮称「郡市区医師会情報システム委員連絡協議会」とでも言うべきものを年1〜2回は正式に定期的に開催していくこと。

の2点が、今、布石として日本医師会がすべきことと小生は考えます。これらの布石が打てなかった場合、ORCAの成果が現れ始める4,5年後になってから、地域の現場で「笛吹けど踊らず」「泥棒捕らえて縄を綯う」という事態に陥る恐れがあると小生は危惧しています。

と指摘した。それから2年経った現在、この危惧は徐々に現実化しつつあると筆者は感じており、地域医師会レベルでORCAに対する認識をある程度平準化することは困難な状況に陥っていると感じている。

以上から考えると、地域医師会レベルでベンダー育成を後方支援していくことは、一部の地域で目覚しい効果を上げており、それが進んでいくことを期待する一方で、それが全国的な広がりとなることは困難な状況にあると筆者は考えている。

ある意味、現在のこのような一部の地域医師会レベルでの成功は、本来、日医-日医総研がすべきでありながらできていないことを、地域医師会レベルで自主的に行ったことによって成功している、とも解釈できるものなのである。

ORCA、今後の課題

それでは、日医-日医総研は、今後どのような方策をとれば、上記のような問題点をクリアし、より早期にORCAを全国に普及させることができるのであろうか? 実現可能か否かをひとまず置いておいて、以下に考えられる方策を列挙すると、

  1. 認定のための受験料や事業所認定手数料を値下げする。
  2. 認定サポート事業者リストをWebページのみならず、定期的に医師会員全員に配布して宣伝していく。
  3. (オンライン、オフラインを問わず) ORCA認定システム主任者になりたいと人と、ORCA認定インストラクタになりたい人がお互いに出会える「場」を作る。
  4. 日医総研主催の通信教育などを創り、認定試験の勉強を進めやすくする教育制度を創る。
  5. 認定サポート事業者に対する経済的な支援策を考える。
  6. 医療事務を教えているビジネス学校等にORCAを宣伝し、ハードがあれば、それにORCAをインストールするようなサポートをする。
  7. コンピュータ技術者、医療事務を学んでいる人を対象としたORCAを宣伝する説明会を全国で開く。

以上のような方策が考えられる。

まとめ

満2年を迎えたORCAは、筆者にとっては当初の予想以上にうまく動いているように思える。その一方でまだまだ課題は多く、特にベンダー育成策はORCAプロジェクトの成否を握る重要な問題だと考えられる。


リンク

「八木版”2歳になったORCA”:KNOPPIXの利用」: 八木先生、ありがとうございました