日時: 平成15年3月16日午前10時
場所: 米子コンベンションセンター ビッグシップ5階 第4,5会議室
安陪内科医院 安陪隆明
近年、ORCAが世に出てきたことが、医療情報の世界で大きな話題となっているが、そのORCA誕生の背景を考えるとき、レセコンにおける標準化が進んでいなかった問題を無視することができない。そしてレセコンにおける標準化の問題はORCAによって大分進展したが、電子カルテ等、それ以外の医療情報機器では、依然として標準化の問題が存在しており、このことは今後の医療情報の進歩を阻む要因となっている。
現在の医療情報における標準化案としては、
等が有名である。画像を扱うDICOMなどは、ほぼデファクトスタンダードになったと考えてよいが、一般の医師が気軽に設定できるレベルではない。またそれ以外の標準化についての動きは依然として流動的であり、まだ当分具体的にどうすべきかははっきりしていない。結局、現在の規格をある程度取り入れつつ、将来、変更されていく可能性を考慮した柔軟性が必要とされているのが実情である。
CSVやXMLで出力できるようにしておけば、ある程度の部分は、今後標準となる規格へ変更することは可能である。しかし、すべての部分が将来の標準に変換できることは望み薄のため、現在の医療情報データは、コンピュータの自動分析の対象としてではなく、人が読むためのテキストとしての利用になることも覚悟すべきである。
石津吉彦 石津クリニック
当院は現在電子カルテを導入していない.
しかし、各種患者情報をデータベース化して診療に利用している.
医療情報をファイリングする事により、診療が経営的にも医学的にも質の向上をもたらしていると感じているが、あらゆるデータを”電子カルテ”化する事に多少の不安がある事も事実である.
電子カルテ導入のメリットとされるものの中には、実現が疑わしいか実現には費用が掛かる可能性のあるものも多い.
例えば、患者情報をネットワークで共有できる...という、ものである.
これは、セキュリティーを考えるとコストが嵩む要因となる.
また、現在、既に多くの施設でデータフォーマットの共通性のない電子カルテが導入されつつあり、レセコンの例をみると各メーカーが情報を共有できるシステムに移行する事は考え難い.
電子カルテを導入すると情報の共有化が可能になり、各種疾患がEvidenceBasedMedicineを基に治療されるようになると思われている事が果たして可能か今後考えてみたい.
現在、診療に使っているカルテは、誰かに見せる為に書いているか...殆どは医者のメモになっていると思われる.
後々データベースとして利用する為には、テンプレートで入力したりキーボードで入力したデータが入り乱れた病歴欄では困難である.
aという薬剤はAという疾患に対して処方されたものである事、bという検査はBという病名に対して行われた行為であるという事が明示的に関連付けられたデータベースが必要である.
当院では、電子カルテ導入は費用対効果の面で時期尚早と考え、各種医療情報をデータベース化し独自にファイリングを行っている.
これの利点は、自分の診療スタイルに合わせて効率化が安価にできる.
画像データとして、ファイバースコープ、レントゲン写真、聴力検査やCTなど.
その他、診療情報提供書、各種血液検査、処方内容や処置行為のテータベースをファイリング化している.
これらのファイリングによりデータを自由に二次利用できるため、医療内容の充実は勿論の事、レセプトチェックの自動処理、診療行為の詳細な分析による経営効率の向上などに役立っている.
電子カルテを導入しないでもそれ以上の効率化が得られるという確信が揺らぐ迄、導入は見合わせるつもりである.
座長: 阿部耳鼻科医院 阿部博章
医療法人真誠会 小田貢
真誠会グループは、組織的には医療法人真誠会と社会福祉法人真誠会から成り立っている。地域的に見ると、米子ホスピタウンと、弓浜ホスピタウン、在宅福祉センター真誠会の3つが離れた場所に存在している。それらは介護保険としての約20の事業所から成る複合体施設である。そのため、いろいろの面からこの真誠会グループのIT化、ネットワーク化はそのまま遠隔医療、地域医療福祉ネットワークのモデル、あるいは実験の場としても捕らえる事が出来る。
真誠会グループは、各種の院内ネットワークが張り巡らされており、業務の主流はこのネットワークを通して行なわれる。このITによるネットワークは従来のピラミッド型とは異なった業務伝達方法であり、職場のフラット化、職場に於る人間の平等化を一層強く実現する方法でもある。
過去の組織の伝達方法では各レベルの中間管理職を通して業務の指示があり、現場の報告はこのピラミッドを逆流してトップに伝わるが、このITネットワークでは、トップから全職員に一斉に指示が伝わり、現場の意見も直接トップに伝えることが出来る。
すなわち、IT化は組織の体質の変化を伴うものであり、組織の改革を伴わないIT化は真のIT化とは言えない。また、単にインターネット、パソコンによるネットワークのみではなく随時テレビ電話を使い多元の情報の伝達、教育、研究発表が行なわれている。
真誠会では縦割りではなく、業務別、レベル別の各種のメーリングリストがあり、それを使っての情報交換、あるいは会議が可能である。いろいろな最新情報、各種の専門的情報はこれら各種のメーリングリストを使い現場に配布されている。
各種の医療福祉情報、企業内のマニュアル、あるいは医療福祉の現場のマニュアル、厚生省からの配布資料などがサーバーで管理され職場のあらゆるところからそれを閲覧し、グループ全体は共通の理解と共通の手技、技術で業務が出来るようにしている。
患者、あるいは介護保険の利用者の病歴は真誠会独自の病歴管理システムで管理されている。現在では医療関係、介護保険関連においても多種の書類が必要であり、その多くは病歴を必要としている。病歴管理とこれらの書類の作成がリンクしていることが省力化、スピードアップに非常に大切である。
真誠会医院では胃透視以外のレ線写真、内視鏡、超音波などの結果をファイリングし、遠隔医療にも使えるようになっている。これらの画像は暗号化されて他の医療機関に画像を送ることが出来る。また、ある特定の情報に関しては認証されたパソコンからアクセスして画像を閲覧できる。それに加え、心電図も心電図記録と同時に無線LANでサーバーに記録され真誠会の複数の場所から閲覧することが出来る。
真誠会訪問看護ステーションでは、平成15年3月より訪問看護スタッフの一部の携帯電話を画像送信機能付きの機種にした。利用者の方の病態を写真や動画で記録し、主治医へ送信連絡して情報交換を行い、適切な指示を得られるようにしている。
この画像をステーションのパソコンに送ることにより症例をステーションで画像を見ながら検討したり、その写真や動画を研究・学会発表に使用することも出来る。そして、利用者の経過観察の画像ファイルとしても保存し記録する事が可能である。
真誠会では平成15年6月より訪問看護ステーションスタッフの携帯電話をすべて画像送信機能付き携帯電話に切り替える予定である。この種類の携帯電話は各ステーションにも配置して、現場の状況報告、事故報告、患者、入所者の状態を責任者に送るための手段として使いたい。
真誠会では現在、医療情報の発信を携帯電話に送信するメールマガジンサービスを行っている。また同時に患者希望者に検査結果を携帯電話でお知らせするサービスを実施している。
現在の携帯電話機能のめまぐるしい進歩を考えると、携帯電話を利用した医療連携、、患者の健康管理、医療指導など患者医療機関との結びつきは携帯電話が主流になってくる可能性があり、またコストパーフォーマンスから考えても有力であると考える。
電子カルテの導入は検討されているが、未だ希望に合った電子カルテが見つからないというのが現実である。
その一つには、電子カルテは電子カルテというクローズドのものであり、すでに真誠会で使用している患者、利用者の病歴管理システム、あるいは介護保険関連システムとの情報交換が困難であることである。
また、現在の電子カルテの多くはパソコンというハードとの抱き合わせで売っていることも問題である。近い将来オルカの電子カルテ版が出来ることを期待している。
鳥取大学医学部附属病院医療情報部部長 近藤博史
2003年2月に米国サンディエゴでおこなわれた米国の病院情報システムの導入報告、企業説明、機器展示等をおこなう学会、HIMSS(Hospital Information and Management System Society)の報告として、米国では急速にオーダリングシステム、電子カルテが普及しつつある。経営効率改善、リスクの低減のための判断支援が目的であるが、日本におけるクリニカルパスに比べると時間軸や達成目標などが無く単純なオーダー・セットが目を引いた。これは不安定狭心症などの病名に応じて食事、バイタルチェック、看護指示、処方、注射などがセット化されたものである。また、検査結果が低カリウム血しょうの場合、警告とともに推奨の治療のリストが現れるものであった。臨床現場において論文もガイドラインも、紙に書いたクリニカルパスも利用されにくく、オーダリング・システムに盛り込むべきとの発表があった。HL-7のブースでは、v3よりもCCOM(Webでユーザ認証と患者IDを引き継いでオーダシステム、電子カルテシステム、画像システム間を移行できる規格。)が中心であった。教育講演や機器展示では4月から実施される法律 HIPPA対策に関するものが多かった。
次に鳥取大学の現状として、本年1月より新システムに移行した。現時点ではシステム移行、データ移行に労力を割いた。今後1年間でフルオーダ化、電子カルテ、地域医療連携をおこなう予定。システム開発に当たっては厚生労働省のグランドデザインにあるように「あるべき姿」の実現を主眼に、経営改善、リスク低減、患者への説明責任、診療支援を目的にしている。これらの目的達成には電子カルテの職員間での共有、無線LANによるベッドサイドの実施入力、物流システムの導入、予約の充実が必要と考えている。
本年4月から始まる特定機能病院等の入院の包括支払いも大学病院には大きな影響があるが、厚生労働省は対象病院を拡大する方針であり概略を報告した。この包括支払い制度に向けて過小診療、過多診療への対策として電子カルテとともにクリニカルパスの導入が重要になってきている。
標準化について、今回の導入においてシステムインターフェースは標準化を原則としていたが、現在接続の機器については機器改造費を持つことができず、現行の仕様でも仕方無しとしたが、ベンダーが変わったため、放射線機器に関しては前ベンダーの独自仕様よりはDICOM仕様が安価になり、DICOMの標準規格による接続ができた。システム内のデータ通信は独自仕様でHL-7化はできなかった。
地域医療連携については、経済産業省の「四国4県診療所電子カルテネットワーク事業」でシステム開発に関して標準化とセキュリティー対策の実例を説明した。
また、宇宙開発事業団とおこなっている大学病院と日野病院在宅間のモバイルホスピタル実験ではテレビ会議システムの質が通信の太さにより大きく異なり、利用目的が変わること、コラボレーション機能の必要性を示した。
上記、2つの経験と徳島大学での大学病院間ハイビジョン放送MINCSの経験から、県の情報ハイウェー利用に関して、ネットワーク上に構築するシステムの要求する通信太さとその機能、導入の必要要件について概説した。具体的には、通信の太さとセキュリティー面から、一般用知識データベースのホームページ、救急隊用基幹病院空床照会ホームページ、カンファレンス用テレビ会議システム、高精細動画像配信システムとコラボレーションシステム、病院、診療症の電子カルテ参照システム、物流、医事会計のグループ病院の連携システム、個人医療情報ASPなどに関して説明した。
日南病院 院長 高見徹
日南病院はその地域性から「町全体が病院である」という理念の元に、在宅介護にも力を入れている。その在宅介護を支援する手段として、TV電話システムの活用を行っているので、その報告を行った。
鳥取県東部医師会情報ネットワーク委員会委員
中山小児科内科医院 中山裕雄
インターネットを活用した鳥取県東部地域の空床情報システムを紹介します。
インフルエンザ等感染症の多い時期には市中病院は満床傾向となり、患者搬送する東部消防にとっても受け入れ病院にとってもどの病院にどのくらい空床があるのかという情報はリアルタイムに把握したい重要な情報である。ところがシステム化以前は東部消防が電話で各病院に問い合わせる、病院がFAXで連絡するという方法しか無かった。現実に救急隊が受け入れ病院を探して搬送患者を乗せたまま連絡を待ち続ける事態は珍しいことではなかったらしい。
導入にいたるまでの、医師会、各病院、東部消防の間にある種々の障壁、格病院自身がリアルタイムには空床を把握していないこと、誰がいつ情報を把握してデータを更新するかという担当者の不在、空床情報事態がある種病院の経営状態を反映する情報で外部に公開することへの抵抗、セキュリティー等システム上の問題等があった。
日常的に東部消防にとっては有益なシステムであり、病院自身にとっても他の病院の状況が把握したり、休日診療所からも各病院の空床情報把握できる等開業医にとっても紹介先を判断する有益なシステムである。
大規模災害時には空床情報のみならず、伝言板としての役割も果たすと期待できる。大規模災害時の効果等を考えると、今後は中部、西部にも同様なシステムを導入し、地域間の連携も検討する必要があると考えます。
座長: 岩本医院 岩本幸吉
河本医院 河本知秀
現在の各医療機関のレセプト情報は各医療機関から基金・国保そして保険者、あるいは厚生労働省へと流れており、日医へのデータの集積は行なわれていない。そのため日医をはじめ各医療機関は現在行なっている医療全体の情報を把握できないでいる。ORCAおよび電子カルテへの移行によって、デジタル化された医療情報を日医が速やかに正確に把握し、国民へ正しい情報を提供できるようになり、また各医療機関にもその情報をフィードバックできるようになると考えている。
松田内科クリニック 松田潔
ORCAの導入には、導入時のみの費用の差、機種更新での費用の差、改定への対応の早さ、進化の早さ、色々なプログラムの(薬剤情報提供、薬剤併用禁忌など)付属など大変多くのメリットがある。レセコンとしても、患者・薬剤のデータが検索しやすく、2重化されているのでデータのバックアップも万全であり、電子カルテの接続もクライアントを増やすことも可能でありいい評価ができる。
ORCA導入時の問題となるのは、データ移行、通信環境の整備、その経費、レセコン間の操作性の違いと言ったところであろう。
なお、通常の使用では、OSがLINUXであることは何の障害もない。このソフトは使用する人たちの要望にこたえ、まだまだ進化していきもっともっと便利になると期待できるソフトであり、また普及していくことによりどんどん改良されていくであろう。
赤崎診療所 青木智宏
全ていいことはない。
病院、診療所内の体制、地域のニーズに応じて、IT(電子カルテなど)を活用し、 (1)患者の利便性の向上、 (2)患者の安心感、 (3)医療の充実を得ることが達成できればと考えています。
(1)高齢社会に伴う要介護者の増加、疾病の多様化、ニーズの多様化 (2)生活習慣病の増加 (3)医療情報公開のニーズ。以上のようなことを今後の医療の問題としてあげ、いかにITを利用してかかりつけ医の役割を果たすか.
福祉との連携が重要。往診先ではノートを持っていくが,介護サービス状況などがすぐに手に入るような連携、IT活用が必要。訪問看護ステーションとの連携はメール、検討会を行っている.
今後 (1)予防医学 (2)救急医療 (3)高度医療にITを活用する。保健との連携、搬送時間中にカルテ、画像などの情報を見て,対応準備、大学病院から離れていても高度医療の恩恵,などの実現
左野皮膚科医院 左野喜実
現在 FileMakerPro というDataBaseソフトで電子カルテと医療事務ソフト(レセコン)を自作し, 院内LANで使用している。カルテの実際の運用はコンピュータ上であるが, 真正性確保のために, 法的に必要と定められたすべての記載を毎日紙に打ち出し, 情報提供書, 検査報告書などの紙類は打ち出されたカルテの裏面にのり付けしている。また, 病理検査の標本などは別に保存している。電子カルテ運用し始めて2年4ヶ月ほどになるが, その経験を発表させていただく。
最初の動機はカルテ保存場所が手狭になったことであった。その当時から,電子カルテの話題はあり, いくつかすでに市販もされていたが, どう見ても使いやすいとは言えなかった。そこでFileMakerProで自作しようと思い立った。ただ実際に試運転してみると, レセコンとの連携が思いの他ネックになることに気がついた。新規受診者のデータを電子カルテに再入力しなければならない。料金請求のためにも電子カルテで指示した診療内容をレセコンに再入力しなければならない。また, その再入力の際に誤入力の危険もある。それらの理由で電子カルテとレセコンの両者を一体化したものをFileMakerProで自作し, 運用して現在に至っている。
実際に運用を初めて2年4ヶ月の経験から感じることは,
鳥取県東部医師会情報ネットワーク委員会委員
中山小児科内科医院 中山裕雄
ORCAと電子カルテ間でデータを交換する方法にはODBC,JDBC,CLAIM,EJB等の方法が可能であるが、今回はeDolphinとVMwareの中のORCAとCLAIMで情報をやりとりする方法について実演した。
ORCAで受付を行うと、患者情報がCLAIMのインスタンスとしてeDolphinへ送られ、eDolphinで受付が自動で完了します。今度は受け付けられた患者のカルテで診療を行い、保存すると、診療行為のCLAIMインスタンスがORCAへ送られ、該当患者の診療行為入力が自動で完了します。
ともすれば、CLAIMの説明を文章で読むと難解でイメージがつかめませんが、実際の動作を見るとCLAIMでの接続がどういうものか、目で見て理解できます。