電子カルテの導入をめざして, 市販の電子カルテを検討してみたが, 自分の診療形態に合った使いやすい電子カルテは自作でしか得られないと感じられた。そこで当初, 医療事務ソフト(いわゆるレセコンソフト)と独立した形で, 電子カルテを自作してみたが, 入力作業がレセコンと重複するということに気づき, 継続的運用に困難を感じた。そこでレセコン用のデータを電子カルテに同時利用できれば, 大きな省力化が可能で, さらにデータをサーバに置いておくことでデータ管理の一元化が可能であると考え, 医療事務ソフトと電子カルテを統合したソフトの開発をMacintoshTM上のファイルメーカープロ4.1TM(以下FMP)で試みた。
FMPは初心者でも比較的組みしやすいリレーショナルデータベースソフトであり, 修正, 変更が容易である。さらにWindowsマシン, MacOSマシン,いずれの環境でも動作し, それらが混在したLAN上でServer & Client型の運用ができるのも大きな利点である。ただ4th DimentionTM, MS-AccessTMに比べて命令セットが少なく, 複雑なリレーションを挟んだファイルどうしのデータ処理に工夫を要する。今の時点では作者の技量不足のためレセコン作業のステップ中に手作業を必要とする。ただし, これもメーカーによるソフト機能の改良, 開発者の知識が高まれば十分使用に耐えるものができると考えている。
自作の統合ソフトは, 患者基本事項, 日々の計算, 月のレセプト, データ保管, 病名, 処方, 検査, 薬剤, カルテなど, 別々のファイルに保存され, それらを複数のリレーションで連結する手法を取っている。鳥取県特別医療制度にも適応させている。カルテ部分には臨床写真, 検査結果の取り込みが可能である。
問題点
1. レセコンソフトの開発にあたっては, (1)保険診療上の規則に関する情報を正確な形で得る必要がある。たとえば,
再診時の外来管理加算が算定できる検査と処置, 検査とそれに対する判断料の種類,
OCRの算出法などである。それらは支払基金事務局などに直接あたって情報を得るしかない。現在のところ一般医家にこれらの情報がわかりやすい形で公開されているとは言い難い。(2)また,
朝令暮改, と揶揄される保険診療規則の再三の変更に追随できるソフト機能, それを使いこなす技量が将来にわたって保証できるかどうかも新システム導入時の判断材料であろう。
2. 電子カルテは医師自身が使いこなさねばならないという意味でレセコンの導入より困難であると感じる。具体的には, (1)入力方法はキーボードからの入力が一般的であるが, 忙しい診療と同時進行の形で, キーボード入力を続けることは紙カルテに比してかなり非効率的である。(2)手書きの図を紙カルテと同じように素早く描く(入力する)ことは文字入力よりさらに困難である。(3)厚生省が許可している電子カルテに適合させるのも容易でない。書き換えを許さない電子保存法はまだ試行錯誤の段階であるし, それを忠実に実現させると電子カルテの利点を損なうと考える。現時点では電子カルテの長所を取り入れながら紙カルテとの平行運用が望ましいという印象を受ける。
<自作統合ソフト外観>